心に残る歌 ラエ、世界に向けてアルゼンチン

“一頭身の差で”、選ばなければならないという焦燥感を抱えるタンゴ

“一頭身の差で”というタンゴのこの一曲、90年代、アル・パチーノ主演の映画 セント・オフ・ウーマン/夢の香 のテーマソングとして世界中で有名になりました。彼のキャリアの中で唯一のオスカー最優秀男優賞を受けた作品です。

タンゴ名コンビ カルロス・ガルデル(作曲)アルフレド・レペラ(作詞)の最も優れた作品の1つとして知られます。1935年ニューヨークで作られました。オリジナル・バージョンは映画“タンゴバール”のためガルデル自身の歌声で録音されました。

同年ガルデルとレペラはほぼ同じ時期に飛行機事故で亡くなりました。最初はレペラ、3ヶ月後、ツアーで滞在していたコロンビアのメデジンでガルデルも亡くなりました。アルゼンチンの法律により、作者の死後72年以上経ったことでタンゴ“一頭身の差”は著作権保護対象外となっています。

 

 

タンゴプロジェクトというバンドのインストゥルメンタルバージョンで “1頭身の差で”1番お聞き下さい

ガルデルが大好きだった競馬に関係する歌詞です。“一頭身の差で”という一節で始まります。

競馬と1人の女性への愛、両方とも賭けにでるが両方とも失ってしまう、甘苦いそんな感情を歌います。

アルゼンチンのロッカー アンドレス・カラマロのバージョンで2番お聞き下さい

 

///1頭身の差で
血統のよい馬が
まさに入線のとき
速度を落として通過した

そして戻りながら何か言うようだ :
---兄弟よ, 言うまでもないが,
賭けない という方法もあるのだ ---

ある人による
ある日の狂乱
あの気の変わりやすい
ふざけた女, (笑顔の女)
笑いながら本当だと,
その愛について偽りを言う
火刑柱の炎上
全て私の愛情///

またこのタンゴは “タンゴバール”という映画の主題歌ともなりました。現在はもう姿を消してしまったスイパチャ・シネマで上映されました。
競馬の賭けと女性への愛、約束事をするが守りきれない、その幻滅感、不安感、焦燥感を歌っているとの解釈もあります。
聞いていただきます3番では賭け事を意味するtimba、競馬の馬を指すpingoなどアルゼンチン独特のスペイン語スラングが出てきます。
レゲエのリズムでロス・ペリコスというバンドで“1頭身の差で”3番お聞き下さい

///1頭身の差で
幾度落胆したことか
私は何度も決意した
繰り返さない
だが, ひとつの視線が
私を傷つけて通るとき
あの火の口
もう一度キスしたいと思う

レースは十分である
勝負事は終わりにする
厳しい終盤を
私はもう見ない
でも, もしどこかの馬が
確実に思える日曜日,
私は数字遊びに行くだろう
それが私の仕様///

1935年のオリジナル・バージョンでは、ガルデルが理性を持って抑えきれない競馬への執念と1人の女性への愛がギリシャ悲劇のように歌われています。
///ある人のせいで
全てがおかしくなった
接触する彼女の口が
重い心を消去し
苦痛を静める

1頭身の差で
もし彼女が私を忘れるなら
すべてがどうでもいい
生き長らえる
何のために生きるのか///
もう何もかも失うことを達観しているガルデルの心情が映し出されています。
では最後に“1頭身の差で”カルロス・ガルデルのオリジナル・バージョンお聞き下さい。

日本語訳・ナレーション:植田敬子
制作:シルバーナ・アベジャネ−ダ
ウェブサイト:フリアン・コルテスjulián cortez